家族信託の認知症対策
- 2017/5/6
- 2018/12/25
家族信託で認知症への備え
家族信託のご相談の中でも、特に多いご相談が、認知症の対策です。
「相続税の対策をしたいけど、お父さんの体調が心配・・・。」
このようなお悩みは、実はとても多くあります。
認知症になってしまうことにより、様々なリスクがあります。
認知症になると、法律上有効な意思判断ができなくなるため、預貯金の管理であったり、不動産を売ることができなくなったり、相続税の対策を行うことができなくなってしまいます。
認知症により支障が出てくるものの例としては、
土地や建物などの不動産について、
- 売買の契約
- 大規模修繕
- 建て替え
- 不動産の売却
相続・生前対策として、
- 遺言書の作成
- 生前贈与による相続税対策
- 不動産などの資産活用
- 節税対策としての資産組み換え
これらの財産の管理・運用について、認知症に備えた対策としての家族信託は、とても有効な手段です。
認知症と平均寿命・健康寿命
認知症を考えるにあたっては、「健康寿命」というキーワードがポイントになります。
健康寿命とは、認知症になったりせずに、日常生活に不自由なく健康で元気でいられる寿命のことです。
この健康寿命と、平均寿命の差が、どれだけの期間になるかという点が、重要です。
いざ認知症になってしまった場合に、それからの財産管理をどのようにしていけばよいのか、問題となってきます。
認知症になると、実質的に財産が凍結され、成年後見人を選任しないと動かせない、また後見人を選任しても、財産の管理処分が自由にできず、制限されてしまうということになります。
以下は、平均寿命と健康寿命の差です(男女別)
健康寿命と平均寿命の差
男性の場合は、
- 平均寿命 79.55歳
- 健康寿命 70.42歳
健康寿命と平均寿命の差 9.13年
女性の場合は、
- 平均寿命 86.30歳
- 健康寿命 73.62歳
平均寿命と健康寿命の差 12.68年
平均寿命は、男性は約80歳、女性は約86歳となっています。
そして、健康寿命は、男性は約70歳、女性は約74歳ということで、
健康ではない状態で生活する期間が、男性だと約9年、女性だと約12年にもなるのです。
この間に、認知症になってしまったら、とても困ったことになってしまいます。
平均寿命の伸び
さらに、この平均寿命は、大幅に伸びており、この先も長生きになるという推計が出ています。
平成72年(2060年)には、男性の平均寿命が84.19歳、女性の平均寿命が90.91歳になるということで、
男性・女性とも約4年ほど長生きになるようです。
そうなった場合に、健康寿命後のご家族の負担は、大変大きなものになってきます。
認知症対策の家族信託の事例
認知症に備えた家族信託のケースとしては、以下のような仕組みとなります。
- 委託者 父
- 受託者 長男
- 受益者 父
家族信託のスタート時点では、現金・預貯金・不動産などを所有する父が、委託者となります。
受託者として、同居する長男が、その財産を預かり、管理したり運用を行います。
そして、委託者である父が、そのまま受益者となり、賃料などの家賃収入や利益を受け取ることになります。
家族信託においては、実質的な所有者は、受益者である父のままと言えるでしょう。
また、家族信託が開始した後に、父が亡くなった場合には母を次順位の受益者とする、受託者である長男にもしものことがあった場合にはその子どもを受託者とするなど、その家庭の事情に合わせて、家族信託の仕組みをつくっていくことができます。
ほかに、長男だけに任せておくことが心配ということであれば、受託者を監督する信託監督人をつけて、チェックするということも可能です。