家族信託と成年後見・任意後見の比較
- 2017/5/6
- 2019/3/26
認知症対策としての家族信託と後見
認知症対策として、家族信託のほかに、成年後見と任意後見の制度があります。
それぞれ、手続きのメリットとデメリットがありますので、ご家族の状況に合わせて、適切な方法を選択することが重要です。
家族信託の制度の詳細は、家族信託で認知症対策のページをご覧ください。
任意後見とは
任意後見とは、将来的に判断能力が衰えてしまったときに備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を選んでおく制度です。
自分の財産の管理・処分や、身の回りの世話について、具体的な自分の希望を支援者に頼んでおくことができます。
任意後見契約を結びます。また、任意後見に付随して以下のような契約があります。
①任意代理契約
任意代理契約は、依頼者の判断能力がまだあるときに、支援する人に財産管理と身上監護の事務を任せる契約です。
②遺言書の作成
遺言は、成年後見終了後のことも支援する人に、自分の財産をどう処分してほしいかなど、自分の意思を最後まで尊重することができます。
③死後事務委任契約
依頼者(依頼者)が受任者に対して、自己の死後の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を付与して、自己の死後の事務を委託する委任契約をいいます。
任意後見を利用できるケース
任意後見は、以下のような場合に利用することができる制度です。
- 今は大丈夫だが将来認知症になった時に不安だ
- 一人暮らしの老後を安心して過ごしたい
- 老人ホームに入居する手続きや支払い等の代行をお願いしたい
- 自分の意思で悔いのない人生を送りたい
- 入所する施設や自分の生活スタイルを自分で決めたい
- 後見人になってもらう人をあらかじめ決めておきたい
任意後見のメリットとデメリット
任意後見手続きのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
依頼者が自由に契約内容を決定することができます | 依頼者の判断能力が低下する前に契約できますが実働はできません
依頼者が自由に任意後見人を選ぶことができます | 必ず監督人が必要です
公的機関(公証役場、家庭裁判所)が関与します | 手続きに時間・費用がかかります(公正証書での契約と裁判所への申立が必要です)
判断能力が衰えなければ任意後見が発動することがありません
見守り契約とは
見守り契約(みまもりけいやく)とは、任意後見制度が始まるまでの間、任意後見人となる予定の方が本人を定期的に訪問したり電話などで連絡を取り合ったりする契約のことです。
定期的に連絡を取り合うため、本人は体調の変化や悩み事などの相談を行う事ができ、また支援する側も本人の判断能力の有無などを確認する事ができます。
高齢者に家族の方がおり日々の状態を把握してくれる人がいる場合は良いのですが、一人暮らしをされていたり、同居されている方でも同居人も高齢者である場合などに有効です。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の事務を、第三者に対して、以下の内容に関する事務についての代理する権利を与えて、自分の死後の諸手続を委任する契約をいいます。
死後事務委任契約は、原則として、委任者の死亡によって終了してしまいます。
そのため、当事者の契約で「委任者の死亡によっても契約を終了させない」という合意をすることもできます。
注意)例えば「不動産を長男Aに相続させる」というような内容は、事務手続ではありませんので、別途遺言書に記載する必要があります。
死後事務委任契約の事務手続き
- 遺体の引き取り
- 葬儀、埋葬、納骨、永代供養等に関する事務
- 生活用品・家財道具等(遺品)の整理・処分に関する事務
- 自宅の退去明渡し、敷金等の精算事務
- 家族、親族、その他関係者への死亡した旨の連絡事務
- 生前の債務(入院・入所費用の精算)の弁済
- 相続人・利害関係人等への遺品・相続財産の引継事務
家族信託と後見の比較
家族信託と、任意後見、成年後見の比較を表にまとめました。
家族信託 | 任意後見 | 成年後見 | |
手続き | 信託契約 | 任意後見契約 | 家庭裁判所へ申立て |
当事者 | 自由 | 自由 | 家庭裁判所が選任 |
監督 | 信託監督人(任意) | 後見監督人(後見開始時) | 家庭裁判所 |
死亡 | 終了しない | 終了する | 終了する |
財産 | 受益者(実質的な権利) | 本人 | 本人 |
根拠法律 | 信託法 | 任意後見に関する法律 | 民法 |
状況に合わせて、適切な手続きを選択していく必要があります。
成年後見の利用実態
家族信託と密接な関係がある成年後見制度の利用について、動画をご覧ください。
家族信託の関連ページ
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※日本司法書士連合会WEBサイトより引用