家族信託って何?メリット・デメリットを教えて!
- 家族信託の認知症対策
- 2022/10/17
- 2022/10/17
財産などの所有権はイメージ構造としてお金をもらう権利と、その財産を管理する権利に分けられます。家族信託とは、この所有権の管理する権利を信頼できる家族に託すことで財産の管理をする方法です。
図1 所有権の構造
家族信託をすると、所有者である親が認知症などになってしまった場合でも影響を受けずに子供が託された財産を管理・運用・処分をすることが出来ます。 この家族信託について詳しく見ていきましょう。
家族信託の仕組み
家族信託は「委託者」「受託者」「受益者」という3者間で行われます。
図2 委託者・受託者・受益者について
家族信託のメリットはこれだ!
家族信託のメリットについて説明していきます。
財産管理が容易に行うことが出来る
現在、認知症は65歳以上では約16%といわれています。親が認知症などになってしまうと様々な契約をすることが難しくなってしまい、銀行から預貯金を下ろしたり、自宅等の不動産を売却したりすることが難しくなってしまいます。 認知症が悪化した場合には成年後見人制度を利用することも可能ですが、親族が家庭裁判所から後見人に選任される可能性は低く、また財産の管理運用処分が制限されることもあります。家族信託は成年後見人制度を使わずに親が認知症などになってしまった際の財産管理ができ、財産の名義を子供名義に変更可能でなど広い権限を与えられることが大きなメリットです。
財産の継承・事業継承が委託者の思い通りにすることが出来る
家族信託の契約の中に財産から利益を受ける権利を継ぐ人を決めておくことで遺言と同様に法律上有効となり委託者の希望通りに継がせることが可能です。さらに家族信託では次の後継者だけでなく3番目となる後継者も決めることが可能です。
委託者が亡くなった場合にリスクのある不動産の共有をする必要が無い
親から受け継いだアパートや、マンションといった収益不動産を兄弟で共有している場合が多くあります。兄弟のうち1人が認知症などになり判断能力がなくなってしまうと、新しい入居者と契約する場合や、建物が古く傷んできたので大規模修繕を行う場合は共有者の承諾が必要になるために契約をすることが出来ず、貸して家賃収入を得たいと思っていても収益不動産の全体が凍結してしまう可能性があります。そこで家族信託を使い、兄弟のうちの1人が収益不動産の運営を行い、他の兄弟は持ち分を受託者となる兄弟に持ち分を信託すれば家賃収入は兄弟全員が得ることが出来ます。
家族信託には倒産隔離機能がある
家族信託の場合、受託者が信託財産に関係のない多額の負債(債務)を負ってしまった場合に、信託財産を差押えすることはできません。これを倒産隔離機能といいます。
相続での遺族の負担の軽減することが出来る
家族信託契約で財産の承継者を決定することにより、委託者が亡くなり相続が発生した場合の遺産分割協議が不要になります。そこで家族信託契約で財産の承継者を決めていれば認知症や相続争いによるトラブルを防ぐことが出来ます。
家族信託のデメリットとは?
便利な家族信託ですがデメリットもあります。では、そのデメリットを見ていきましょう。
受託者のなり手がいない場合がある
家族信託の受託者を誰もやりたがらない可能性があります。先にご説明した収益不動産を例にすると、受託者には建物を管理する義務があり、老朽化により通行人等に怪我をさせてしまった場合の治療費等の損害の賠償は受託者が負うことになります。受託者が負う善管注意義務や忠実義務、分別管理義務等が負担となりなり手が見つからないという可能性があります。
親族間で不公平が生まれる可能性がある
家族信託は、委託者が亡くなった場合に相続する相続人全員の許可が無くても委託者と受託者間で合意すれば契約が成立します。そのため、相続人の1人が受託者として財産を管理することに対して他の相続人から不満が出る可能性があります。
年金や農地といった信託できない財産がある
公的年金は預金口座に振り込まれれば預金残高になるため信託をすることは出来ますが、家族信託で受託者が管理している信託口口座を年金振込口座に指定することは出来ません。また、農地は農地法により取引が規制されているため、所管の農業委員会の許可または届出が無ければ売買や贈与契約は出来ず、家族信託も同様です。
家族信託は身上監護権がない
家族信託は後見人制度と違い身上監護権がありません。家族信託は財産管理のための制度のため身上監護を受託者が担うことは出来ません。
家族信託はメリットの多い制度ですがデメリットもあります。わからないことは専門家に相談しながらうまく活用しましょう。
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