家族信託・民事信託のための信託法の条文解説(5)
- 家族信託の認知症対策
- 2021/10/19
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前回までのブログ→ 条文解説(1)、条文解説(2)、条文解説(3)、条文解説(4)
第二節 受託者の義務等
受託者の注意義務
受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
2 受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。
【解説】受託者は、信託の本旨に従い、「善良な管理者の注意」をもって、委任事務を処理する義無を負います。
善良な管理者の注意義務とは、管理者の職業や社会的・経済的地位に応じて、業務を委託された受託者の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。注意義務を怠り損害が生じた場合は、民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や受託者の解任などが可能となります。
信託契約等で上記の受託者の注意義務を「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」に軽減することができます。同義務は、重過失がある場合には、損害賠償責任等を負うが、軽過失の場合は、損害賠償責任等を負わないということになります。
尚、信託契約等で、注意義務を軽減は可能であるが、なくするとは、できないとされています。
家族信託・民事信託の契約では、受託者が財産の信託を受け(預かり)、管理をするという形になりますので、責任をもって管理をしていただくためにも、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)として設定することが多いです。
忠実義務
【解説】受託者は、受益者のために積極的な忠実義務を負うとともに、消極的には、利益相反行為を行うことはできません。40条3項では、忠実義務に違反した場合、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定されると規定しています。
利益相反行為の制限
受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。
【解説】受託者は、委託を受けた信託財産を自己が所有する固有財産に帰属させたり、又は、自己が所有する固有財産を信託財産に帰属させてはいけないと規定しています。
家族信託・民事信託では、受託者の自分自身の財産と、信託を受けた財産を明確に区分する必要があります。
【解説】受託者は、別々に委託を受けた2つ以上の信託財産を他の信託財産に帰属させてはいけないと規定しています。
家族信託・民事信託では、たとえば、お父様を委託者とする信託契約と、お母様を委託者とする信託契約の2本を締結して、信託財産の管理を行うということもよくあります。そのような場合に、お父様の信託財産を、お母様の信託財産のほうに帰属させることはできません。
【解説】第三者との間において信託財産のためにする行為においては、受託者は双方代理をしてはならないと規定されています。
【解説】受託者の固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債権を被担保債権として、委託を受けた信託財産に担保権を設定することは受託者にはできないと規定されています。
また、その他第三者との間おいて信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反する行為もできないと規定されています。
【解説】前項における利益相反の制限については、次の各号に該当する場合は制限が解除されると規定されています。
但し、信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を、他の信託の信託財産に帰属させることについては、信託契約等に解除できない旨の定めがある場合は、制限の解除ができません。
【解説】
1号 信託契約書等に、利益相反行為をすることを認める定めがあるとき。
2号 受託者が、外形的には利益相反行為であるが、実質的には、受益者の利益になること等を説明して受益者の承認を得たとき。
3号 相続や遺贈の包括承継により、信託財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。
4号 受託者が利益相反行為をすることが、信託の目的の達成のために合意的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は利益相反行為の信託財産に与える影響、利益相反行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。
【解説】受託者は、受益者と利益相反行為をしたときには、受益者に対し、利益相反行為についての重要な事実を通知しなければいけません。ただし、信託契約書等に別段の定めがあるときには、その定めるところによると規定されています。
【解説】利益相反行為の解除の規定に違反して、信託財産⇔固有財産の帰属、信託財産⇔他の信託財産の帰属が行われた場合はその帰属行為は無効とすると規定しています。
【解説】利益相反行為の解除の規定に違反して、信託財産⇔固有財産の帰属、信託財産⇔他の信託財産の帰属が行われた場合は、その帰属行為は無効となるが、受益者の追認があれば、行為のときに遡及してさかのぼってその効力を生じると規定されています。
【解説】利益相反行為の解除の規定に違反して、信託財産⇔固有財産の帰属、信託財産⇔他の信託財産の帰属が行われた場合は、その帰属行為は無効となります。
ただし、受託者が第三者との間において処分その他の行為をしたときは、その第三者が悪意または重過失があるときにかぎり、受益者はその処分その他の行為を取消すことができると規定されています。
この場合において、二人以上の受益者がいる場合、一人が取消権を行使した時は、その取り消しは他の受益者のためにも効力を生じます。
また、この取消権は、受益者が、取消しの原因があることを知った時からから三カ月間行使しないときは、時効によって消滅するほか、行為のときから一年経過した時も時効によって消滅することになります。
【解説】第三者との間において信託財産のためにする行為においては、受託者が双方代理をした場合、受託者の固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債権を被担保債権として委託を受けた信託財産に担保権を設定すること、その他第三者との間おいて信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反する行為は、第三者が悪意、重過失のときにかぎり、受益者は当該処分その他の行為を取消すことができます。
この場合において、二人以上の受益者がいる場合、一人が取消権を行使した時は、その取り消しは他の受益者のためにも効力を生じます。。
また、この取消権は、受益者が、取消しの原因があることを知った時からから三カ月間行使しないときは、時効によって消滅するほか、行為のときから一年経過した時も時効によって消滅します。
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